炭酸ガス処理で炭疽病が広がるんじゃないの?という声を聞くことがあります。確かに炭酸ガス処理を行う際、密閉するため炭疽病の発生が助長される環境になりそうなのは理解できます。やはり弊社としても不安の声は払拭したいと考えていますので、平成27年(2015年)に栃木県芳賀農業振興事務所がIPM講習会にて報告した炭酸ガス処理と炭疽病の関係を紹介します。まずはイチゴの炭疽病についてご紹介します。
イチゴにおける炭疽病について
イチゴで発生する炭疽病菌は大きくわけて2種類存在します。頻繁に葉で病斑を誘起するColletotrichum acutatumと葉柄で繁殖するColletotrichum fructicolaが存在します。後者のC. fructicolaは枯死を引き起こす可能性が高く、非常に重要度は高いです。もちろん前者のC. acutatumも枯死を引き起こしますが、それほど枯死は起こしません。どちらも葉上に黒斑症状を呈することが知られています(図1)また、どちらも感染が広がるには胞子の拡散が必要です。胞子は鮭肉色を示します(図2、図3)。
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図1 葉上での黒斑症状 |
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図2 葉上での胞子 | 図3 葉柄での胞子 |
炭酸ガス処理による炭疽病の発生試験
栃木県芳賀農業振興事務所の平成27年度IPM講習会によると平成26年(2014年)9月17日に定植したA氏と同年9月16日に定植したB氏の2名の協力を得て、炭疽病の調査を実施したとのことです。結果、処理後~定植1ヶ月後までの炭疽病の発生は処理区および無処理区ともに発生割合に差は確認されませんでした(表1)。
弊社の炭酸ガス処理装置では、処理が原因での炭疽病の発生はありません! 安心してお使いいただけます。
炭疽病の防除対策について
イチゴの炭疽病は高温多湿条件の育苗期に発生しやすい病気です。胞子が水はねや降雨によって飛散することで伝染します。苗床が冠水した際に多く発生することがあります。防除にあたり、以下のことに注意しましょう。
- 本圃の土壌消毒
定植前に本圃の土壌消毒を実施してください。土壌中に炭疽病菌は潜んでいます。 - 発病株や感染株の早期発見と抜き取り
発病株や感染が疑われる株は見つけ次第抜き取り、圃場外で処分してください。また、発病株の周辺株も感染している可能性があります。このような潜在感染株は一見無症状であるため、注意が必要です。 - 水の跳ね返りがないようにする
雨や潅水、水滴などの跳ね返りで飛散し感染が広まります。頭上潅水は控え、点滴チューブを用いるなどし、水の跳ね返りを抑えるようにしましょう。 - ローテーション散布を行う
炭疽病菌は症状が出てからの治療は困難です。表2に登録のある薬剤一覧を記載します。発病前にRACコードの異なる薬剤のローテーション散布を行ってください。
また、薬剤抵抗性を持つ炭疽病菌も確認されています。表3に菌叢生育抑制率を示しています。抑制率の低い薬剤は抵抗性を獲得している可能性があります。